研究概要 |
ブチロシン生産菌Bacillus circulansから単離した遺伝子(btrC)の大量発現系が既に構築出来ている糖質環化酵素2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素(DOIS)を活用し、バイオマス資源であるグルコースの化学工業資源化と関連酵素による有用物質生産を目指して、DOISの詳細な検討と関連酵素の探索及び機能解析を行った。引き続きブチロシン生合成遺伝子(btr)クラスターの解読を進め、現在までにほぼその全容の解明が出来た。ブチロシン特有の置換基である4-アミノ-2-ヒドロキシ酪酸はグルタミン酸からGABAを経由して生合成されることを同位体標識実験により明らかにし、脱炭酸酵素遺伝子と推定されるbtrKの大腸菌での発現系を構築した。さらにbtrクラスター中に、2-デオキシ-soyllo-イノソースヘのアミノ基転移酵素遺伝子を発見し、発現と反応解析によりその機能を確認した。さらにbtrCとアミノ基転移酵素遺伝子の両者を導入した組み換え大腸菌を構築した。 DOISの改変に向けて先ず、基質認識について検討し、3-アミノ-3-デオキシグルコース-6-リン酸が基質として受容され環化生成物を与えることを確認した。このことから酵素による基質2位の認識は水素結合供与で、3位の認識は水素結合受容で行われることが明らかになった。3位認識にASP-135の関与を推定し、D135S, D135A, D135Kの変異酵素を造成し反応解析した結果、Asp-135は活性発現に重要であるが基質認識に直接関与するわけではないことが明らかとなった。カルバグルコース型阻害剤が強力な競争阻害剤で機構依存的にDOISと共有結合を形成し、酵素反応が停止することを明らかにした。現在DOISのX線結晶構造解析を進めている。
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