研究概要 |
Sorianoらが開発したレトロウイルス・ベクターに、我々が開発した両方向選択マーカーを挿入することによって構築されたエンハンサー・トラップ・ベクターpROSA-nGBTは、培養細胞において様々なシグナルに応答する遺伝子を検出、同定するために有用である(秋山ら、Mol.Cell.Biol.20,3266-3273,2000)。この方法の応用として、TGF-betaおよびブレオマイシンに応答する遺伝子のスクリーニングを試みた。その結果、それぞれの系において興味深い遺伝子が複数同定され、その成果の一部は論文として発表することができた。すなわち、TGF-betaに応答する適伝子として見出されたTMXは、小胞体に局在する膜貫通型の新規チオレドキシン・ファミリー・タンパク質をコードする。TMXを発現させた細胞は、brefeldin による細胞アポトーシスを抑制することから、小胞体ストレスを緩和する役割を担う分子である可能性が示唆された(松尾ら、J.Biol.Chem,2001)。一方、DNA切断活性を持つ薬剤ブレオマイシンに応答する遺伝子として同定されたcIAP2は、アポトーシス抑制に関わる既知分子をコードするが、そのプロモーター中のNF-kB結含配列が、ブレオマイシンおよび電離放射線への応答性に賓任を持つことが明かとなった(上田ら、FEBS Lett,2001)。このプロモーターは比較的低線量の放射線に応答することから、がんの放射線遺伝子治療への応用が期待される。
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