研究概要 |
造血幹細胞が発生、増幅することが明らかとなったマウスの胎生10.5日のマウス胎児aorta-gonad-mesonephros(AGM)領域からストローマ細胞株の樹立を試みた。すでに複数のストローマ細胞株の樹立に世界で初めて成功し、この内の1つ(AGMA9)は、サイトカイン無添加でマウス及びヒトいずれの造血幹細胞の長期にわたる増殖支持能を持つという画期的なものであった。また、同じAGM領域から造血幹細胞増殖支持能を持たないストローマ細胞株(AGMA7)の樹立にも成功した。AGMA9、AGMA7およびOP9などの既知の数種類のストローマ細胞株よりmRNAを抽出し、RT-PCR法などを用いて各種サイトカインmRNAの発現を検討した。AGMA9から取り出したmRNAからはSCF,SDF-1,OSM,IL-6,HGF,MIP-1γ,Gas6,MCP-3などが検出されたが、M-CSF,EPO,TPO,Flk2/Flt3 ligand,MIP-1αなど未分化造血前駆細胞に作用することが知られているサイトカインのmRNAは検出されなかった。マウスSCF,OSM,IL-6を組み合わせてヒトCD34+CD38-細胞を培養したが、造血前駆細胞の増幅は認められなかった。造血幹細胞増殖支持能を持つAGMA9および持たないAGMA7や弱い活性を認めるOP9よりcDNAライブラリーを作成し、signal sequence trap,gene discovery arrayなどを用いて、A9に発現していてA7に発現していないまたは発現が少ない遺伝子を中心にクローニングを行っている。そのような遺伝子として既に200個以上同定され、未知の遺伝子も数+個同定されている。現在それらの機能解析が進行中である。
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