研究課題
原発性肺癌患者の末梢血NKT細胞の解析を施行し、その機能測定システムを確立した。その結果、肺癌患者では末梢血NKT細胞数は減少しているものの、残存するNKT細胞の機能は保存されており、さらに末梢血の単核球から作製した抗原提示細胞のα-GalCer提示能はほぼ正常であることが判明した。マウス肺で存在するNKT細胞の絶対数(臓器重量あたり)より多くのNKT細胞がヒト肺内に存在し、さらに腫瘍組織では高い集積が見られることが明らかとなった。さらにマウス樹状細胞にα-GalCerをパルスし静脈注射すると、肺内に集積し、反応した肺内NKT細胞は次の日には一過性に減少するものの数日後には10倍以上に上昇し、その上昇は約1週間続くことが明らかになった(Motohashi et al.2002; Int. J Cancer)。平成13年度より、米国FDAの細胞調整基準を遵守し、かつGMP基準での品質管理、品質保証下に、患者本人の樹状細胞にα-GalCerをパルス提示したものを投与し、安全性の検討を行う第一相試験を施行した。細胞投与に関連するGrade 3以上の重篤な有害事象は認めなかった。Grade 2以下の有害事象としては、頭痛、顔面紅潮、血清カリウムの上昇、血清クレアチニンの上昇、血清総ビリルビンの上昇を認めた症例があったもののいずれも軽快した。レベル1,2においては、α-GalCerパルス樹状細胞投与と末梢血NKT細胞数の変化およびNKT細胞特異的なIFN-γ産生能の間には有意な相関を認めなかった。レベル3では、α-GalCerパルス樹状細胞投与と関連し、末梢血NKT細胞数が劇的に増加した症例を1例認めた。3ヶ月の観察期間内に明らかな抗腫瘍効果を示した例を認めていない。今後、第二相試験へ展開する予定となっている。
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