研究課題/領域番号 |
11357019
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
後藤 勝年 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (30012660)
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研究分担者 |
宮内 卓 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60222329)
三輪 佳宏 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (70263845)
桜井 武 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (60251055)
村田 栄 田辺製薬, 医薬育成研究所・循環薬理部, 部長
粕谷 善俊 千葉大学, 大学院・医学研究科・高次機能系分子生体機構学, 助教授 (70221877)
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キーワード | 心不全 / エンドセリン / 受容体 / 受容体拮抗薬 / アポトーシス / ミトコンドリア / 動脈硬化 / upregulation |
研究概要 |
本研究は心不全を例にとり、エンドセリン(ET)の役割を中心に、新しい分子薬理学的研究法を確立して解析し、慢性循環器系疾患の病態生理の解明と斬新な治療法を開発することを目的とする。これまでに心筋梗塞や心筋症による慢性心不全、肺高血圧症による右心室不全モデル動物等において、ペプチド性ET_A受容体拮抗薬(BQ-123)の浸透圧ミニポンプによる持続投与が有効なことを示してきたが、今回、非ペプチド性の経口投与可能なET_A受容体拮抗薬(TA-201,BMS-193884)を餌に混入して持続投与した場合でも著効を発揮することを示し、臨床応用への可能性を更に大きなものとした。これらの結果は、慢性心不全に内因性のET-1が密接に関わっていることを物語るもので、その細胞・分子レベルにおける機構の解明にも迫った。培養心筋にミトコンドリア阻害薬(rotenone,CoCl_2,antimycin A,etc)を適用すると、24時間後には心筋のエネルギー代謝は脂肪酸のβ-酸化系から解糖系に移行し、MTT assayによるミトコンドリア機能が大幅に低下していた。更に培養を続けると(〜72時間)DNAラダーが観察されると共にcaspase-3活性の上昇が認められ、心筋のアポトーシスが引き起こされた。ET mRNAの発現はアポトーシスに先行してミトコンドリア機能低下と共に著明に増加しており、細胞障害に深く関わっていることが示唆された。ラットにミトコンドリア阻害薬を投与した際にも同様に、ETの発現上昇と心筋エネルギー代謝異常に伴い血行動態の異常が生じることを確かめている。一方、GFPと融合させたET_A及びET_B受容体を培養細胞に過剰発現させてGFPの蛍光を観察すると、ET_Aは殆どが細胞膜上に、ET_Bは細胞膜と同時に細胞内顆粒(lysosome)にも局在することが判明した。興味深いことに、ET-1と結合すると特にET_Aは安定化し、長時間膜や細胞内に留まる。ET-1の作用持続が長いことや、疾患時にET_A upregulationが生じることと関係しているかもしれない。最近、心筋梗塞や心不全と深い関わりのある動脈硬化の発生にET-1が重要な役割を果たしていることを見出しており、新たな展開が予想される。
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