超音速分子線中の分子をフェムト秒レーザーで励起電子状態の複数の回転状態にコヒーレントに励起し、回転波束の時間発展を光電子画像の強度と角度分布の変化から観測する方法を開発した。回転波束は光励起直後に分子軸をcos^2θの精度で整列させるが、異なる角運動量成分の干渉が起こり、高速に等方的分布に変わる。回転温度20Kのピラジン分子の場合、これは2.8psであった。同論文は、光電子角度分布を分子固定系で測定する新手法として注目され、Physical Review Lettersに現在印刷中である。強レーザー場を導入することで、回転波束の角運動量成分を増やすことが出来るため、分子の空間配向(整列)をより先鋭に確立することも可能である。今後の発展が期待される。この他、平成12年度には、真空紫外光を発生する新しい装置を設計し、現在組み上げている。液滴分子に対して超強レーザーパルスを導入し、非線形光学過程によって発生する真空紫外光を分光器で選択的に取り出し、これまで軌道放射光などの大がかりな設備を必要とした実験を小さな装置で可能にする。この真空紫外光で、分子を高効率にイオン化し質量分析を行う装置を実現する計画である。
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