研究課題/領域番号 |
11410006
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 純章 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (40101638)
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研究分担者 |
杉山 寛行 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (50135274)
宮治 昭 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70022374)
和田 壽弘 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00201260)
大野 栄人 愛知学院大学, 文学部, 教授 (10113060)
斎藤 明 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80170489)
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キーワード | 無表 / 無作 / akriya / Bodhicaryavatara / Navya-nyaya / ガンダーラ / 吉蔵 / 智ぎ |
研究概要 |
本年度は興味ある進展がみられた。1.加藤は引用文献を調査しつつ、特に「無作」の原語を探った。羅什は『中論頌』では明らかにavijnapati(無表、無教)を無作と訳しているが、『成実論』の無作の原語はakriyaの可能性が高く、この語は有部のavijnapatiに比べて、仏教の業思想一般の中により自然に位置づけられることを指摘した。『大智度論』の無作もその内容からakriyaの可能性が高い。『大智度論』の中には、同じ羅什訳『成実論』の内容と関連の深いものが多くみられるようである。2.斎藤は中観派の論書『入菩提行論』(Bodhicaryavatara)に対する一チベット訳註釈書から、「外界の有を主張する中観派」の存在を指摘した。空観思想における外界の有・無の内容を吟味することは、『大智度論』の空観思想をいま一度理解し直す上で、極めて重要である。3.和田は『大智度論』に引用される勝論(Vaisesika)学派が発展した最終的形態であるNavya-nyaya(新論理学)の特徴を、初期の勝論学派の思想と比較研究し、2000年8月のカナダ・モントリオールで開催されたICANASで発表した。4.宮治はインド西北部のガンダーラ等の仏像がどのようにシルクロードを経て中国に至るまでに変化したかを調査し、『大智度論』の中にその思想的関連性を見出そうと試みている。5.杉山は『大智度論』『中論』『百論』等の序文に注目し、これらの中に僧叡等の羅什の中国人弟子たちの儒教・道教の素養の深さを確認しようと努めている。6.大野は主として『続高僧伝』中の『大智度論』講説・研究の記事を調査し、隋・初唐の中国仏教では『大智度論』の専門的研究が意外に少ないこと、また三論宗祖吉蔵に『大智度論』への批難が多いことを指摘した。そして『大智度論』は中国仏教の底流に影響を与えながらも、天台智ぎの思想の中に結実していく予想を立てている。以上の諸研究はいずれも『大智度論』を従来とは異なった面から捉え直そうとする試みである。
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