研究概要 |
1976年にMIT出版から季刊誌として創刊され現在まで続いている雑誌『オクトーバー』は、主に1970年代以降の現代アートの批評と理論の活動を多方面にわたって行っている一大フォーラムの場として注目されている。この雑誌の編集をかねて論考を執筆している人々、すなわちロザリンド・クラウス、ベンジャミン・ブークロー、イヴ=アラン・ボア、ハル・フォスターなどは、「オクトーバー」派と呼ばれている。本研究目的は、『オクトーバー』の全体像を歴史と理論の両面にわたって考察し、そこから美的モダニズムとポストモダンのアート批評の諸問題を考えることであった。研究成果として次のような点を挙げることが出来る。 1,芸術ジャンルあるいはメディアからいえば、オクトーバー派は、映画、写真、彫刻をとりわけ重視している。エイゼンシュテンの映画、R.セラの彫刻、1920年代のダダや構成主義のフォトモンタージュに対して新たな評価を行った点を挙げることが出来る。 2,モダニズムの見直しという点では、1920年代前後のアヴァンギャルドが単に機能主義や合理主義を超えた多様な特色を併せ持っていたこと、1960年代のアメリカのアートも第二のアヴァンギャルドとして重要であることが再確認された。 3,インデックス、カムフラージュ、フォームレス、パルスといったフォルムの新たな概念による作品分析は、たしかに従来のフォーマリズムを超えるひとつの方向である。 4,フェミニズム、制度批判、精神分析などの視点からの作品分析も、単なるフォーマリズムを超える注目すべき方向であるが、その理論的拠り所となるフランスのポスト構造主義の批判も併せて行うべきである。
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