研究概要 |
対応する刺激情報が一部欠損しているにもかかわらず,それを補い,欠損がない場合と同等の知覚内容を生じる視覚系の機能を一括して視覚的補完(visual completion)とよび,さらに,補完された部分が実際に見える感性的補完(modal completion)と,見えないが存在が知覚される非感性的補完(amodal completion)にわけて分類した.代表的な補完現象としては,視覚ファントム(visual phantoms)を取り上げた.ファントムとは,縞刺激の中央部分を不透明な帯で遮蔽すると,遮蔽部分にも縞が淡く誘導され,上下の縞が連結して知覚される現象であり,これにより非感性的補完から感性的補完への移行や,両者の共通特性を検討することができた. 具体的には,ファントムはこれまで暗所視レベルで報告されてきたが,誘導縞のコントラストを低く,しかもその平均輝度から離れた値に帯輝度を設定すれば,明所視レベルでも観察することを見出し,Photopic phantomとして発表した.また,これまで,生後1ヶ月の乳児では視覚的補完は不可能とされてきたが,低い空間周波数の縞を細い帯で遮蔽すると,1ヶ月児でも縞の連続性を知覚できることを見出した. その他,ファントムが輝度情報に依存しないで生起する可能性や,補完部分の形状がベジェ曲線で記述できる可能性を見出し,投稿論文や学会発表を準備中である.
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