研究概要 |
欲求性および嫌悪性事態における対処行動ならびに発達的要因の影響について検討した. 欲求性事態:3種の近交系マウスについて即時小報酬と遅延大報酬の選択を検討したところ, C57BL/6とDBA/2に比べてBALB/cが即時小報酬を選択する傾向が強く, 欲求性事態において衝動的傾向が強いことがわかった. またラットにおいては, 餌対処行動に関する基礎データを得ることができた. すなわち, ラットは餌の大きさに応じて, 巣に持ち帰るか, その場で食べるかを選択するが, 採餌テストの反復はその選択に影響しなかった. この結果は, 餌対処行動の選択が採餌場面に対する慣れやそれによる不安の低減といった一過性の要因の影響を受けにくいことを示唆した. 嫌悪性場面:オープンフィールドにおける移動活動量によって選択された高・低活動系マウスは情動性に関しても分離している可能性が示唆されてきた. そこで, 高・低活動系マウスのオープンフィールド対処行動に対する抗不安薬の効果を検討した. ベンゾジアゼピン系の代表的抗不安薬であるジアゼパムは中用量において高活動系およびその基礎集団であるICRにおいて活動量を増加させたが, 低活動系では効果がなかった. しかし, 不安傾向を反映するといわれるいくつかの行動要素は低活動系においても変化した. 一方, セロトニン系に作用するブスピロンはいずれの系統でも中・低用量では効果がなく, 高用量で不動を増加させた. これらの結果は, オープンフィールド対処行動がベンゾジアゼピン-GABA系の統御下にあり, それは遺伝的支配を受けていることを示唆した. 発達的要因:一夫一婦制のスナネズミに対象にして, 嫌悪性および社会的事態における対処行動に対する雄親の影響について検討した. その結果, 敵対的相互作用における他個体への対処行動が雄親の影響を受けることがわかった.
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