研究概要 |
本研究の目的は、知覚統合に関わる情報処理過程を脳イメージング法によって解析することである。最終年度では、コントラスト知覚の視覚的文脈依存性および知覚属性間の相互作用と統合過程の解析を主眼に、下記の研究成果を得た。 1),解析の基盤となるヒト視覚皮質の構成をfMRIを用いて詳細に検討し、7つの視覚野(V1,V2,V3,VP, V4v, V8,MT)の解剖学的特徴(皮質面積・体積など)を定量化した。加えて、個人差を加味した視覚野の確率地図を作製した。 2)明暗正弦波テスト刺激の周囲に同じ方位・周波数の明暗正弦波刺激を併置し観察すると、テスト刺激のコントラスト感は大きく低下する。このコントラスト知覚の文脈依存性と脳活動との関係を解析することを目的とし、ヒト視覚野(主にV1,V2)において、テスト刺激に対するfMRI応答に異なる方位の周辺刺激が及ぼす効果を解析した。その結果、ヒトのV1及びV2における局所刺激(テスト領域)に対する神経活動は、その周囲刺激によって抑制され、この抑制効果は、周囲領域とテスト領域の方位が等しいときにより強くなることがわかった。またこの応答変調の刺激依存性は、知覚的コントラスト変化の刺激依存性とも一致することから、知覚的コントラストは、視覚野(V1,V2)における方位選択的神経細胞間の空間的相互作用め影響を受けて決まるものと考えられる。 3)明暗属性と色属性の統合過程を検討する目的で、明暗刺激によって示された上記視覚的文脈効果と脳活動との関係を、等輝度色刺激を用いて検討した。その結果、色刺激についても知覚に対応した脳活動の抑制が見られること、ただし、その抑制は輝度刺激に比べ空間的に広いことが判明した。
|