研究概要 |
痛みに関する第1の実験では,圧と電気パルスを痛み刺激として用い,不安と注意が痛み評定値に与える影響について調べた。圧を痛み刺激として用いた場合は,痛みに注意を向け低不安状態のとき,痛み評定平均値は実験試行の関数として他の条件の場合より急速に増加した。また,電気パルスを刺激として用いた場合は,痛みに注意を向けず不安状態の条件のみで,痛み評定値は実験試行の関数として増加した。こうした現象を説明するモデルとして,侵害刺激に対する被験者の不安の程度と視覚的体験(注意の有無)の不一致が考えられた。 痛みに関する第2の実験では,温冷刺激を用いて,温かさと冷たさの感覚尺度を構成するとともに,同じ刺激に対して痛み尺度(温痛と冷痛)を構成した。温刺激と冷刺激の発生には,本科学研究費で購入した温熱感覚分析装置(TSA-2001,Medoc Ltd)を用いた。感覚尺度については,温刺激でベキ指数3.12,冷刺激でベキ指数1.77となり,温刺激の感覚尺度の方が急勾配となった。痛み尺度についても,温刺激の尺度の方が冷刺激の尺度よりも急勾配となった。感覚尺度と痛み尺度を比較すると,刺激が皮膚の順応温度に近い場合を除き,両者の間にはほぼ線形の関係が成り立つことがわかった。 振動感覚に関する実験では,皮膚表面に垂直方向の刺激と水平方向(接線方向)の刺激を提示し,両者の振動検出閾曲線パターンを比較した。その結果,振動周波数100Hz以下の部分で両曲線の勾配が異なることが発見された。この部分について皮膚温度を変化させた実験を行なったところ,垂直・水平両曲線パターンを決定していると考えられる皮膚機械受容単位が互いに異なっていることが判明した。すなわち,垂直振動では速順応I型単位,水平振動では遅順応II型単位が振動検出閾パターン決定に関与していると推定された。これらの機械受容単位の空間的加重特性について調べたところ,速順応I型単位も遅順応II型単位も空間的加重を示さないことがわかった。 論文については,裏面に掲載したもののほか数編を投稿中,あるいは投稿準備中である。
|