研究概要 |
公正の絆仮説とは、組織や集団による決定が公正に成されたと知覚することが人々の組織や集団に対する肯定的態度(集団コミットメント)を強めるというものである。本研究では、日本の社会システムに対する一般市民の評価と態度を分析することによってこの仮説の検討を目指した。本年度は社会システムとして政策決定と遂行に注目し、特に、公共事業政策とこれに伴って発生する地域紛争の解決策について一般市民の認知、評価、価値観などを測定し、それらと国や政府に対する態度との関係において果たす手続き的公正の役割を検討した。全国の15地区において無作為抽出した成人3,000名を対象に郵送調査を行い772名より回答を得た(回収率25.7%)。社会的公正感、政府に対する信頼、公共事業政策などに対する回答者の評価は全体として厳しいものであった。公共事業政策評価は事業そのものの評価と事業主体である行政の評価に分かれること、前者に関しては肯定的評価と否定的評価が独立性の高い別次元となることなどが見いだされた。また、政府に対して一般的信頼を持つ回答者が公共事業政策をあらゆる面で肯定的に評価する傾向が見られ、このことは、人々がヒューリステックな政策評価を行っていることを示唆している。また、政府に対する一般的信頼は、ミクロ、マクロ、地域、職業の4水準における社会的公正感によって強められることも確認された。このことは、日本社会において自分がどのように扱われていると感じるかが政府に対する態度を規定するとする絆仮説を再確認するものであった。
|