研究課題/領域番号 |
11410031
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河合 俊雄 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (30234008)
|
研究分担者 |
佐々木 承玄 京都大学, 教育学研究科, 助手 (40303797)
山中 康裕 京都大学, 教育学研究科, 教授 (30080162)
|
キーワード | バセドウ病 / 精神病圏 / バウムテスト / 室内画 / 空間構成 / 主体 / 心身症 |
研究概要 |
神戸市内にある隈病院にて、パセドウ病患者45名に対し、まず、MPI(モーズレイ性格検査)とバウムテストを実施した。その結果、本症患者の全体的傾向として、MPIでは特に神経症傾向が高いとは言えないこと、バウムテストでは自我境界が弱く情動統制が良くないこと、が見いだされた。これらのことから、本症患者が臨床的に呈する情緒不安定は、内的葛藤から生ずる神経症的なものとは質的に異なり、より深い人格病理と関わるものであると推測された。また、バウムテストの形態を検討した結果、病理水準としては、精神病圏との近縁性が示唆されるものが多数認められた。さらに、描画テストとしての家屋画-室内画法も実施した。併せて一般健常者にも同テストを実施し、このテスト自体の標準化を図るとともに、比較検討を通してパセドウ病患者の内的世界をより詳しく把握することを試みた。その結果、本症患者は、概して室内画における空間構成で困難をきたすことが見いだされ、自分が生きる空間をうまくイメージできないことが窺われた。また、このことの背景には、遠近法的空間把握に不可欠な自我の視座を持ち得ていないことが考えられた。さらに室内画を検討した結果、空間構成ができない患者の中でも、少なくとも以下の2タイプがあることが判明した。一つは、空間が多次元化しているもので、風景構成法で言うP型にほぼ相当し、精神病の中でも特に妄想型との親和性が示唆される。また、もう一つのタイプは、室内を図面化、抽象化しているもので、精神病的な崩れはないものの、アレキシシミックな印象が強いものである。以上の所見は、今後バセドウ病患者に対する心理療法的接近や身体疾患の持つ意味を考えていく上での重要な切り口になると思われる。現在、以上を論文として投稿準備中であり、また河合俊雄の「心理臨床の理論」で、バセドウ病患者の主体のあり方の問題として考察されている(p141-143)。
|