研究課題/領域番号 |
11410033
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北山 修 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (80243856)
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研究分担者 |
遠藤 利彦 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 助教授 (90242106)
中村 知靖 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 助教授 (30251614)
三浦 佳世 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (60239176)
中村 俊哉 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (80274398)
田中 優子 法政大学, 第一教養学部, 教授 (40139390)
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キーワード | 浮世絵 / 母子関係 / 育児文化 / 視線 / 画像処理 / 印象評定 |
研究概要 |
「浮世絵における母子の視線と印象評価-感性心理学的検討」 浮世絵における母子の位置や視線(方向、対象)が、一方では日本の伝統的な育児文化を反映するとともに、他方ではそれを見る鑑賞者に特定の感情を惹起させるのではないか、という指摘が臨床的観点から提出されている。本研究は特に感性心理学の立場から印象評価の手法を用い、後者の指摘を実験的に検討したものである。 鈴木春信の「庭先の母子」を原画に、登場人物である「女性(母)」と「幼児(子)」の密着度(距離)、視線方向(顔の向き)、注視対象(鳥)の有無を変数として画像処理を行い、刺激図版を作成した。図版における「女性」の印象を10対の形容詞によって男女大学生に評価させ、多変量解析の手法を用いて印象の構造を調べるとともに、類似した印象の絵画を分類した。また、登場人物の視線方向(視覚的関係)と会話状況(聴覚的関係)に関する質問も行い、二人の関係性に関する鑑賞者の解釈を合わせて調べた。 評定尺度の因子分析の結果、2因子が抽出され、愛情の厚い、誠実な、暖かい、責任感のある等の印象が含まれる第1因子と、激しい、不安定な、感情的なという印象によって構成される第2因子に分かれた。前者を、母親に対して期待される「母性性」、後者を母親としては未熟、もしくは母親であっても失われることのない母親以前の女性性を示唆する「前母性性」と解釈した。 印象の類似した絵は3群に分かれ、女性の視線が幼児に向いているもの、向いていないもの、残りの1枚に分かれた。SDプロフィールから、視線の向いている群(見守る構図)は「母性性」の印象を、向いていない群(無視する構図)は「前母性性」の印象を喚起することが示された。残りの1枚は、「母性性」の印象を喚起するものであったが、視線は幼児に向かず注視対象に注がれていた。一方、この絵では幼児も女性と同じ対象を注視しており(平行共視)、「会話がある」と解釈されていた。対面していなくても母子が世界を共有しているという解釈がなされると、好印象をもたらすことが示唆される。また、密着(肩車)していると好ましい印象を喚起することも示された。今後、鑑賞者が自己を投影する登場人物と印象評価との関係を検討していきたい。
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