自動車教習所の協力を得て、高齢ドライバー198名を対象に走行テストを行い、運転能力についての自己評価、運転パフォーマンス、痴呆症診断テスト得点との関係を見た。運転行動の自己評価は高齢になるほど高くなる。一方、指導員による運転行動評価は逆の傾向を示した。すなわち、指導員との評価のずれは高齢になるほどが大きくなる。指導員評価と自己評価のずれと、痴呆症診断テストCERADの下位テストである単語遅延記憶の間には負の相関が認められた。指導員による運転行動評価に関しては、単語遅延記憶成績と負の相関を示した。痴呆症診断テストとして開発されたCERADの下位テストのなかで、単語遅延記憶テストは運転行動スキルおよびその主観的評価能力に関しての予測指標として有効である可能性が認められた。 さらに、高齢ドライバーの問題行動の一つである交差点における一時停止・確認行動に焦点を当て、試作した教育マニュアルにしたがって安全教育を行うことで自己評価スキルと一時停止・確認行動の向上の可能性を検討した。その結果、運転行動のある程度の改善は認められたが自己評価については変化が認められなかった。
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