本年度は、茨城県を中心に基礎的な統計の収集および、自治体・地域の関係団体への聴き取りを中心とした予備調査を実施した。第一に、茨城県に居住する外国人に関する県のデータを、90年代に関して市町村別に分析した。茨城県居住の外国人人口は90年代をとうして、約1万人の水準から約四万人の水準へと一貫して急速に増大してきた。国籍別にみると、韓国・中国系のオールド・カマー中心から、ブラジル、タイ、ペルー等のいわゆるニューカマー外国人中心の構成となっている。この中でも、特に際立っているのが、ブラジル系の増大であり、1999年現在1万人を超える水準に達している。加えて注目するべきなのは、地理的な分布のパターンである。事前の予想以上に、小都市や町村の中に高水準の外国人人口比を持つものがある。例えば、人口2.4万人の石下市が5.5%、4.2万人の水海道市が4.1%という注目すべき外国人人口を持っていることが発見された。このような既存データの解析からえられた知見をもとに聴き取り調査を実行し、地域的な産業構造の特性と外国人雇用の関係に関する情報を収集した。この結果、県央・鹿行地帯における水産加工業、県北西部(笠間・真壁)における石材業、県南西部における電子産業.食品加工業という性格を異にする産業集積が、外国人を引き付けている事実を発見した。来年度以降このような外国人労働者がそれぞれの産業にどのように引き付けられ、地域的労働力市場のなかでどのような役割を果たしているかを、企業・事業所レベルでの聞き取り調査に基づいて分析していく。
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