研究概要 |
1.遊牧民の社会文化系の資料化: 佐藤は,英国植民地化政策におけるレンディーレと近隣諸民族との関係を,エチオピア帝国やソマリアランドでのイタリア植民地政府と関連づけて資料化した。現在のレンディーレランドが植民地政府の部族放牧区政策によって,1920年代に画定され,その面積も半減したことが判明した。さらに,部族放牧区政策は,行政上設定されたので,それまでの相互交流的な民族間関係が行政区によって分断され,住民旅行条例によって移動の自由も制限されるようになった。 この結果,レンディーレはそれまでの近隣民族からの略奪から守られたが,遊牧の前提である放牧域を制限されたので,近隣民族横断的な地域社会的安全網が分断され,脆弱となった。 太田は,トゥルカナ社会における家畜の所有と贈与・交換に関する資料を,現金経済化との関連に注目しながら分析した。その結果,家畜は,それぞれの個体が独自なものとして認知されている点において商品化しにくい側面をもっていること,その独自性を消去することによって商品化が始まることなどを明らかにした。 2.土地利用の行政処置: ケニアの国立公園政策との比較で,ニュージーランドの国立公園政策を,マオリ文化資源の保全やマオリ住民の計画参加過程に着目して考察した。その結果在地文化の保全と密接に関連づけた政策が両国で実施されている点が明らかにされた。 3.遊牧生態のGIS解析: 立入は,大気補正など詳細な補正を加えたNOAA/AVHRRの衛星画像を用いて,1987〜1988年のレンディーレの遊牧移動と植生変動の関連性を,正規化植生指標(NDVI)を用いて調べた。その結果,植生量分布と供儀祭の開催場所から影響をうけて遊牧移動が行われることが明らかにされた。安仁屋は,GIS解析手法を検討して,ディジタル等高線データを使った地形分類と地形計測の解析ソフトを開発した。
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