研究課題
基盤研究(B)
本研究は明治維新期における薩摩藩の政治動向について、総合的に研究することを目的とした。研究代表者および研究分担者は、本研究開始以前においては必ずしも薩摩藩および鹿児島県を直接の研究対象としてこなかったが、共同研究および個人研究を通じて鹿児島および各地で薩摩藩および鹿児島県に関する情報や史料を収集し、なおかつ鹿児島県居住の研究者と緊密な交流を行うことができた。そして、従来の個人研究の成果を新しい薩摩藩・鹿児島県研究に反映させるように努めてきた。研究においては単一の事象に論点を集中させず、それぞれの専門性を重視して多様な分析を行ったが、それによる主要な成果は次の通りである。1、近衛家を筆頭とする公家社会と密接な交際がある薩摩藩の情報収集と政策形成との連関を検討。2、大久保利通の政治活動を再検討し、薩摩藩の位置や大久保の政局との関わりをより具体化させた。3、五代友厚を中心とした経済外交とその特色を明らかにした。4、薩摩藩と諸藩の往復書簡の分析を通じ、相互の連関を分析。5、鹿児島藩における藩祖顕彰を検討。6、吉田清成など留学経験者の帰国後における役割を検討。7、征韓論政変後に置ける鹿児島県士族の動向と、不平士族と西郷隆盛および島津久光との関係を分析。8、鹿児島県における秩禄処分の特質について、協力高問題を通じ解明を試みた。そのほか、幕末期における薩摩藩の組織や人事、家臣団内部における権力構造の推移などについては、従来の研究史では不明確であり、本研究においても十分に明らかにすることができなかったが、今後の検討課題としていきたい。
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