本年度の研究は次のような事項を中心に実施した。 1 北海道のチャシの実態を把握すること。 2 東北北部の平安時代高地性集落の実態を把握すること。 上記1、2についての研究成果の概要は次のとおりである。 チャシについては、北海道枝幸郡枝幸町ウバトマナイチャシの発掘調査に参加し、丘先式チャシの規模・構造などについて詳細なデータを得ることができた。ウバトマナイチャシはオホーツク海にむかって突き出た小半島の突端に位置し、基部には濠があり、その中央部は陸橋状に掘り残してある。また濠の内側には柵列が存在する。さらに北海道各地のチャシを踏査し、さまざまな形態のチャシの実態を把握することにもつとめた。 東北北部の平安時代高地性集落については、岩手県岩手郡西根町子飼沢山遺跡の発掘調査を実施し、その年代・集落の規模と構造の把握につとめた。その結果、子飼沢山遺跡は標高500メートルの子飼沢山の頂上付近に存在する平安時代後期、10世紀ころの集落で、約30軒前後の竪穴住居跡が遺存すること、集落の主要部には濠がめぐることなどを確認した。また主として西根町内の高地性集落の分布調査を行ない、我々が先に調査を行なって平安時代の高地性集落であることを確認している暮坪遺跡の沢をはさんだ対岸にも古代のものと思われる高地性集落が存在することを確認し、次年度以降にその年代や規模・構造などを把握するための発掘調査を実施する予定で準備をすすめることにした。
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