中国春秋・戦国時代の青銅資料に関して、化学組成および鉛同位体比の測定を進めた。購入したポータブル蛍光エックス線分析装置の持つ特性を理解し、標準物質の測定などを通して、実用できるまでに機器を整備し、応用した。この装置を用い、東京国立博物館の収蔵庫に所蔵されている資料、また展示中の資料に関して化学組成の測定を進めた。従来の方式(大きな資料を博物館から搬出し、測定器のある施設まで運ぶこと)と比較すると、機器を資料のあるところへ運ぶことができる点で、能率的に測定が進められた。また貴重な資料は館外へ運び出しがほとんど不可能である。このことを考えると単なる時間だけの問題ではない。約100点の資料に関して化学組成を測定した。 鉛の同位体比は資料材料の産地推定に利用できる。すなわち、春秋戦国時代の各国がどのように金属を生産していたかの情報を得ることができる。また中国北方地域の人々が持つ金属文化に対して中国文化がどのように影響していたかの情報を与えてくれる。約100点の春秋・戦国時代資料に関して、鉛同位体比を測定した。なおまだ、試料を採取しただけの資料もある。これらは今までの測定値と比較するために基礎的に非常に重要な成果であった。 新彊地区における資料に関して化学組成の測定を進めることができ、中原地域、あるいは中国北方地域の資料との比較材料として有意義であった。特に銅〓に関しては、その形態ばかりでなく、化学組成にも微妙に変化があり、中国国内、および中国北方地域に住む民族(草原地域)との関連性を示唆した点重要であった。
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