研究分担者 |
久保田 啓一 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80186452)
西田 耕三 近畿大学, 文芸学部, 教授 (70094026)
井上 敏幸 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (50046207)
山田 直子 国文学研究資料館, 整理閲覧部, 助手 (20151011)
上野 洋三 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (30046502)
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研究概要 |
山形県鶴岡市致道博物館所蔵の、庄内藩第7代藩主酒井忠徳の和歌・俳諧資料は、大名の文事研究の基礎固めのために、全資料を漏れなく集成することを前提として、和歌・俳諧の二つに分け、和歌については、和歌資料目録と同翻字篇(詠草その他・短冊・書簡)に、また、俳諧についても、俳諧資料目録と同翻字篇(俳諧之連歌・一枚刷・詠草その他・短冊)にまとめ、それぞれに解説を付した。 この忠徳の和歌資料は、大名家における和歌製作時の、また、和歌修業の実際を伝えるものであると同時に、冷泉家と日野家が入れ替る当時の堂上歌壇の変化を生々しく写したものであり、他に類例を見出しえない貴重な資料であることが判明した。また、俳諧資料は、断片類までの全てが、大名の点取俳諧の実際を具体的に伝えるものであり、この資料の出現によって、初めて大名の点取俳諧の実際、俳諧連歌の創作の場、宗匠と連衆達の遣り取り、点を付け、集計し、賞品を贈るという点取俳諧の手順の実際等々が明らかとなったといえる。 長野県長野市松代藩文化施設管理事務所(真田宝物館)、および国文学研究資料館史料館所蔵真田家文書、並びに同館真田家寄託文書中の真田幸弘の和歌・俳諧資料の調査は、ようやく全体を見渡せる地点に達したといえるが、資料の蒐集整理は、その作業に着手したばかりである。現在の進捗状況を示しておけば、 1,百韻620余巻分の詳細調査カード 2,『引墨到来覚』の翻字(全7冊中の3冊分) 3,『御側御納戸日記』全8冊よりの抄出翻字 4,幸弘追善俳書『ちかのうら』の紹介 5,和歌・俳諧・漢詩詠草類リストその他である。 真田幸弘の俳諧資料は、総体では10万句を越える厖大なものであり、現時点において日本第一の大名点取俳諧資料だということができる。今後この真田家資料と酒井家資料とを重ねてみれば、大名の点取俳譜の全貌が見えてくる筈である。また、大名家の文事が、親しい大名仲間を核として、和歌・俳諧、さらには漢詩へと広がっていることが特に注目される。酒井家・真田家資料全体の調査研究を通して、新しい近世文学史の構築が期待できるように思う。研究はこれから始まるといってよいであろう。
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