研究課題/領域番号 |
11410119
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
玉泉 八州男 千葉大学, 文学部, 教授 (80016360)
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研究分担者 |
清水 徹郎 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (60235653)
住本 規子 明星大学, 人文学部, 教授 (10247174)
小沢 博 関西学院大学, 文学部, 教授 (70169291)
篠崎 実 東京工業大学, 外国語センター, 助教授 (40170881)
井出 新 フェリス女学院大学, 文学部, 助教授 (30193460)
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キーワード | 『スペイン悲劇』の政治的座標 / 前衛的手法と方法論的無自覚 / 暗い情念の理解とロマンスへの拘わり / リアルな散文と純度の高い散文の混淆 / さまざまな意匠と大学才人の宿命 / 分析書誌学によるダンターの仕事の解明 / 大衆性と芸術性の複雑な関係 |
研究概要 |
本研究の最終目標は、シェイクスピアを中心とするエリザベス朝演劇史の書きかえに置かれているが、第二年目に当たる今年度の作業は、1580年代が演劇の開花に果たした役割を、主として喜劇や文化研究から追うことに費やされた。とはいえ、悲劇の考察が疎そかにされたわけではなく、昨年のマーロウに引続き、キッド劇を対象とされ、作品にみられる黙示録的構造と主人公の最後の沈黙との矛盾から、『スペイン悲劇』が現実政治の中で占める位置といったものが詳細に検討された。 喜劇研究は、主としてグリーンを中心に行われた。彼の劇にみられる前衛的な手法と方法論的無自覚の関係、決定論的世界観に基づく暗い情念世界への理解とロマンスという形式への執着といったさまざまな矛盾を通して、80年代を代表する大学才人という新しい知的な劇作家の劇や散文が、当時の演劇興行や出版文化を支えた脆い経済基盤の下で、結局旧体制と低俗な読者層に奉化するさまが明かにされた。 これを補うかのように、ロッジがみせた牧歌にマンスからリアリスティックな小説への移行が、大衆路線をとるべく残酷な流血場面などを多用しているにも拘らず、彼らの受けたヒューマニスト的教育が仇になり、雑多なリアリズム散文と純度の高い散文の奇妙を混淆を生みたしているさまなども語られた。 こうした大学才人の知識人としての宿命と限界は個人的中傷合戦においてすら顕著で、たんなる個人改悪が文学観や一般的人生観、国士的ポーズ等でいかに巧みに武装されているか、にも拘らず、それが「家門」の重視と、軽薄な「学問」の運用への憎悪といった、単純な渊源に発しているかも明らかにされた。 あわせて、分析後誌学による印刷業者ダンターの仕事の全容解明もなされた。
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