研究課題/領域番号 |
11410119
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | 帝京大学 (2001-2002) 千葉大学 (1999-2000) |
研究代表者 |
玉泉 八州男 帝京大学, 文学部, 教授 (80016360)
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研究分担者 |
篠崎 実 千葉大学, 文学部, 助教授 (40170881)
住本 規子 明星大学, 人文学部, 教授 (10247174)
小澤 博 関西学院大学, 文学部, 教授 (70169291)
清水 徹郎 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (60235653)
井出 新 フェリス女学院大学, 文学部, 助教授 (30193460)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2002
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キーワード | 劇作家概念の分水嶺 / 民衆劇場の建設 / 市民権の獲得 / 宮廷風への憧憬 / 大衆文化の誕生 / 大学才人登場 / 「雑種」喜劇 / 興隆への準備期間 |
研究概要 |
1580年代における(劇)作家の概念は揺れていた。すでにそれは中世来の、社会(の特権階級)により集合的に受け容れられている文化の理想のたんなる口上役は脱しつつあった。しかし、己れの個人的意見を述べるという近代的な概念とも相当かけ離れたところにいる。いわば、二つの概念の分水嶺のところに当時の作家はいたのであり、それが彼らの作品に独自の魅力を与えていたのであった。すでに最初の民衆劇場は建てられていた。女王をパトロンに戴く成人劇団もやがて誕生してくる。民衆劇が芸能としての市民権をうるのが、この年代なのであった。これはまた、印刷術の導入から約一世紀、大衆文化がようやく育ちつつある時期でもあった。しかし、国民全体の憧憬の眼差しは、いぜんとして宮廷風に注がれている。両者折衷の中で宮廷風が僅かに優位を占めるというのが、当時の文化状況であった。 こうした中で、軸足を大きく民衆側に傾ける事件が起こる。後半に突然見られた悲劇の開花で、暴君劇も被害者悲劇も一気に大輪の花をつける。これには大学才人の登場が大きく与るが、社会全体を覆う愛国的好戦主義の影響も無視できない。一方、「世相は変わる」ものの、喜劇は旧態依然たる状態に留まっている。宮廷劇は全盛ながら、書く側が切実な動機を欠くから、優美ながら活力に乏しい。古典的な劇概念が模索されているものの、観客が王と道化が共存する「雑種の」土俗的な喜劇に愛着を残している限り、急速な進歩は望めない。劇場、劇団といったハード面が整備されつつも、戯曲という肝腎のソフト面が全体として追いつかなかった時期、作家像、文化概念、虚構意識すべてにおいて新旧二つの潮流が鬩ぎあいつつ、1590年代という未曾有の演劇の隆昌期を準備しつつあった時期、1580年代とはそういう時期なのであった。
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