研究概要 |
阿部潤:ミニマリスト・プログラムの妥当性を研究した成果を解説書として、11の図書覧にあげた共著本の中で紹介した。その中では、言語が持つ線形的特徴と移動特性に関し、従来主張されてきた見解とは異なる研究成果を披露した。また、言語の線形的特徴については、ロンドン大学の星宏人博士と共に日本語と英語の省略構文を引き続き研究している。星宏人博士には昨年度同様今年度も名古屋大学にて講演を行って頂き、ミニマリスト・プログラムの観点から日英語の述語形成に関して昨年度以降からの新しい研究成果を披露して頂いた。 外池俊幸(生成辞書の観点からの辞書の最小化):最近の自然言語処理、知識科学の進展、コンピュータを使った大量のテキストの蓄積などの環境変化から、辞書の最小化という課題を、今年度も引き続き検討を進めてきた。その成果が科研費報告書(「日本語生成的辞書の構造」『WWW上での生成的辞書の構築;辞書を中心とした日本語文法の構造化」(平成10年度度〜平成12年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(2)研究成果報告書))の中で紹介され、特に日本語の生成的辞書を構築することを考える場合に重要となってくる強制(coercion)という機構を導入することの是非を論じた。 滝沢直宏:大規模英語コーパスを用い,様々な「構文」のもつ語彙文法的側面を対象にして研究を行った。具体的に扱ったテーマは,文外に先行詞をもつWhich,省略不可との説さえあった同格名詞句を導くthatの省略,さらにNo sooner...than構文などである。コーパスに基づきこれまで指摘されて来なかった新たな言語事実の発掘を行い,その後に,その事実から窺い知れる語彙と構文の相互依存性に関する考察を行った。これらの研究成果は、11の論文覧に掲載されたものの中で詳しく論じられている。
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