研究課題/領域番号 |
11410124
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇佐美 齋 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50079620)
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研究分担者 |
大浦 康介 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (60185197)
吉田 城 京都大学, 文学研究科, 教授 (80127315)
松島 征 京都大学, 総合人間学部, 教授 (90031476)
森本 淳生 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (90283671)
富永 茂樹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30145213)
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キーワード | 前衛 / アヴァンギャルド / 伝統 / 革新 / 未来派 / シュルレアリスム / ダダイスム / モダニズム |
研究概要 |
平成12年度はとくに本研究の学術的な特色に留意しつつ研究を実施した。すなわち前衛芸術を研究するにあたっての、その総合的理解への志向、および研究の学際性と対象地域の多様性を重視した。そしてそれは、われわれの研究グループの学際性と、われわれが専門とする地域の多様性に呼応するものであった。このグループは、フランス近代詩の研究者を中心として、ディシプリンとしては文学、美学、哲学、演劇、記号論など、地域としてはフランス、イタリア、ドイツ、ロシア、日本の専門家から構成されている。豊富な人材を活かして前衛芸術の多角的な考察につとめた。その際われわれが念頭においたことは、いま前衛芸術(アヴァンギャルド)を問題にするということの意義である。20世紀の芸術はアヴァンギャルドとともに始まった。そして20世紀後半についてみても、美術におけるアンフォルメル、ポップアート、ミニマリズム、コンセプチュアル・アート、小説におけるヌーヴォー・ロマン、演劇における不条理劇やアンダーグラウンド演劇、舞踏のさまざまな流派、映画におけるヌーヴェル・ヴァーグなど、前衛芸術的なものの余波はいたるところに感知されうる。奇しくも20世紀最後の年にあたった本年度において、この「アヴァンギャルド」の本質をもう一度見据えることは、20世紀芸術の総決算につながるといっても過言ではない。 したがって本年度は個々の研究の比較検討と統合につとめた。すなわち平成11年度の研究成果をふまえ、それを発展深化させたのである。具体的には、班員各自が本来持っていた関心、研究会での雑誌類の精査からえられた知見、意見交換から受けた刺激などを統合し、より明確な前衛芸術像を構成するようにつとめた。また、参考文献資料を参照し、前衛芸術の研究史の批判的検討を試みた。 なお学際的な前衛芸術の研究のためには、言語学、言語哲学、精神分析や、さまざまな美学理論、芸術理論の知見が必要不可欠である。平成11年度においてはともすれば自分たちの対象の研究だけにとどまりがちであったが、平成12年度においてはえられた成果をふまえつつ、現代の種々の理論的知見をも参照することにより、視野の拡大にも意を用いた。
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