研究課題/領域番号 |
11410125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 正則 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00027971)
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研究分担者 |
三谷 研爾 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (80200046)
船越 克己 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (40079108)
濱中 春 島根大学, 法文学部, 助教授 (00294356)
渡邉 洋子 大阪学院大学, 経済学部, 助教授 (30135636)
渡邉 哲雄 愛知医科大学, 講師 (70175107)
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キーワード | 空間 / 知覚 / 旅 / 庭園 / 都市 / ジェンダー / 風景 |
研究概要 |
平成11年度は、本研究課題における最初の年度にあたるため、基本文献の収集と研究機材の購入をすすめる一方、平成12年1月23日に阪神ドイツ文学会の主催でおこなわれたシンポジウムにおいてこれまでの成果の一端を報告した。そのさいには、対象とする時期を18世紀後半から19世紀前半の、いわゆる〈はざま期〉に限定して、各種の非文学テクストにあわられた空間経験の様相を、「旅」「庭園」「都市」の三つの側面から検討した。「旅」については、アンナ・アマーリア、ヘルダー、ハインゼなどのイタリア旅行記とラロッシュ夫人のスイス旅行記を取り上げ、空間経験が古典文学の知識を前提としたものから、記述主体自身の直接的な体験に即したものへと変化していった過程をあとづけた。「庭園」については、ヒルシュフェルトとピュックラー=ムスカウの庭園記述を比較して、絵画的な視覚性に依拠した空間知覚のなかに、やがて時間的/歴史的な契機が導入されていった点が明らかにされた。「都市」については、ニコライの地誌的記述とリヒテンベルクの書簡を比較して、都市空間の経験の内実が、視覚性から身体性へと置き換えられている事態が指摘された。これらの非文学テクストが書かれた時期は、ゲーテの『イタリア紀行』が作品として成立していく時期とほぼ重なり合っている。総じていえば、主観と客観の均衡のうちに有機体的空間を現出させようとするゲーテの文学表現と平行するかたちで、それとは異なった空間経験を伝達する試みが、主としていわゆるZweckliteraturの側から提起されていたと考えることができる。1800年前後のこうした複雑な状況が、ゲーテによって達成された文学表現と相互に影響を及ぼしあいながら、どのような展開・変化を遂げていったかを追跡することが今後の課題となるだろう。
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