研究課題/領域番号 |
11410125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 正則 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00027971)
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研究分担者 |
船越 克己 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (40079108)
濱中 春 島根大学, 法文学部, 助教授 (00294356)
浅井 健二郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30092117)
渡辺 洋子 大阪学院大学, 経済学部, 助教授 (30135636)
渡辺 哲雄 愛知医科大学, 医学部, 講師 (70175107)
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キーワード | 空間 / 知覚 / 旅 / 庭園 / 都市 / ジェンダー / 風景 |
研究概要 |
平成13年度は、本研究課題の最終年次にあたり、引き続き文献を収集して海外における最新の研究動向をフォローするとともに、分担者が取り組んでいるテーマの成果をもちよって集中的に検討する研究集会を、12年7月に開催した。その後、分担者ごとに論女を作成し、報告書として取りまとめた。 上記研究集会では、近代ドイツ文学史の記述においていまなお規範的な位置にあるゲーテの空間記述を再検討し、そこからの偏差を示しているさまざまなZweckliteraturのテクストの比較対照によって、空間経験を言語テクスト化する作業が、一方では主観性の濃い文学性へと接近しながら、他方では社会批判的な観点や自然科学的思考、あるいは光学装置の技術的発展に干渉されて、文学性主観性を拡散させていく方向へも展開しようとする、ダイナミズムに貫かれているすがたを確認することができた。具体的に検討されたテクストは、フンボルト、ラロッシュ、ヘルダー、モーリッツ、ハインゼ、フォルスターの旅行記である。また、ビーダーマイアー期の都市記述の例としてシュティフターを、さらに第2帝政期の空間表現の例としてフォンターネを取り上げた。最後に、視覚的知覚中心の空間把握を相対化する可能性として、近年急速に進展しているサウンドスケープ研究との関連性が、ロマン派の物語テクストを材料に検証された。 3年間の本研究によって明かとなったのは、18世紀においては均質で透明なものと考えられていた空間が、1800年前後の「近代文学」の成立と時期を同じくして、主観によって知覚・分節され、意味を付与されたものとして捉え返された事態である。こうして成立した「文学的」な空間把握は、しかしただちに、さまざまの「非文学的」な言説領域からの介入をうけ、不断の緊張関係のなかで産出されていったと考えられる。本研究は、こうした側面について、個別テクストに即した、きわめて具体的な分析を展開することができた。
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