研究課題
基盤研究(B)
ミーニュ編のラテン語教父全集を文学テクストとして再検討することを目的と.して、先ずラテン語教父全集の中から「古典古代学術書の摘要」「古典古代文学の概要」「中世自由7学科の教科書」「中世学芸論」「中世文芸論」「独立した文学作品」「テクスト校訂論」「書誌学」の各分野を目安としてテクストの蒐集を行った。この蒐集に続いて、ラテン語教父全集には収録されていない同種の著作を、古刊本のマイクロフィルム等から蒐集する作業を行った。こうして研究対象を明確にした後に、第にヒエローニュムスによるギリシャ語からの翻訳文学を中心に、ラテン語文献学の発達の足跡を辿り、同時に、編纂者ミーニュ自身のテクスト校訂方針をも、CD-ROMに収録されている初版のテクストに即して検討した。この検討により、ヒエローニュムスがギリシャ語原典を改訂編纂していたことは既に先行研究により証明.されていたこと、にもかかわらずミーニュはヒエローニュムスが改訂作業を行ったことを否定してラテン語教父全集の編纂方針としていたことが明らかになった。第二に中世・ルネサンス諸国語文学にラテン語教父の著作がもたらした影響については、特に典拠研究を主眼として、学芸論と修辞学の分野に関してそれぞれテクストを検討した。この検討の結果、従来認識されていた程度を遙かに越えて、古典古代修辞学の影響が中世・ルネサンス近代諸国語文学に持続している様態が明らかになった。以上の研究成果を蒐集文献の概観とともに研究成果報告書に記載する。