研究課題
本年度は、1980年代末から90年代にかけての政党再編成の中で、日本社会党が無党派票の受け皿から、55年体制を象徴する既成政党へと変質し、連立政権の経験を経て分裂するまでの過程を追跡することが、主要な課題となった。まず、基礎的な資料収集として、村山富市元首相をはじめとする当時の社会党指導者に対して詳細なインタビューを行い、この時期における同党の政治戦略、及びその議論・決定の過程についての資料を整理した。また、研究合宿において論点整理を行い、それぞれの課題に関する試論的なワーキングペーパーを提出した。山田は選挙データを用いて80年代末の土井ブームから90年代における新党ブームへの移行を解明し、社会党の支持票の変動について分析を行った。山口は、連立政権時代の社会党の行動について、内閣における調整や決定の過程に即して、同時代史的なスケッチを行った。酒井は、社会党の安全保障政策の転換について、戦後日本の平和論、憲法論の流れを整理しつつ、その思想的根拠を分析した。村上は、イタリアにおける政党再編成との対比において、イタリアで社会民主主義・中道左派的な理念を軸に形成されたオリーブの木と、90年代日本の新党との対比を行った。米原は、90年代日本で急速に浸透した「市民」というシンボルについて、戦後の革新思想における市民と対比しながら、90年代市民社会の変化について思想史的分析を行った。新川は、社会民主主義思想に関する研究を継続した。中北は、社会党における経済政策の理念の展開に関する研究を継続した。以上の成果は最終年度にさらに深化され、社会党側から見た政党再編の分析として公刊される予定である。
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