研究概要 |
国連が提示した環境・経済統合勘定(SEEA)に、前年度までに開発してきたSEEAの拡張体系-包括的環境・経済勘定行列(GAMEE)-の着想を加味することによって、内閣府(旧経済企画庁)で作成された日本版SEEAをSAM(社会会計行列)形式で表示し、これに基づくSAM乗数(行列乗数)モデルやCGE (Computable General Equilibrium)モデルを作成することによって環境政策に関する様々な分析を行なった。ここで、SAM(社会会計行列)とは、投入産出側面(U表、V表)と分配側面とを組み込んだ点で特徴づけられる国民勘定行列のことである。SAMによって、エコノミーワイドなデータが、モデル・ビルディングにきわめて適したかたちで与えられることから、モデラーは、SAMめ枠組みにあわせてモデルを開発することにより、データの再現チェック等でモデルの整合性を確かめながら、環境政策の様々な比較静学実験を行なうことができる。本研究では、1980年代に世界銀行を舞台として活躍した、G.PyattをはじめとするSAM派の研究蓄積とデータ蓄積を受け継ぐ意図もあり、GAMSとともに当時使用されていたCGE分析用のソルバーであるHERCULESを意識的に使用した。 一方、本研究ではまた、ワルラスが考案した古典的な経済の一般均衡モデルのフレームワークに環境をいかに取り込むか,という手法について理論的考察を行うとともに、これまで発表された各国研究者による実証的環境CGE分析をサーベイし,それらのモデル構築に対して評価・検討を加えた。そして,1970年に発表されたレオンチェフの公害産業連関表奪用いる経済モデルを吟味し,生産関数や消費関数を付け加えたCGEモデルとして再構成し,経済活動のもたらす環境負荷の影響,ならびにそへの対応策としての環境政策(環境税,環境補助金,排出量規制など)の効果を数値計算にもとづき解明した。
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