研究概要 |
本研究の第一の成果は,Leontiefの環境経済モデルに立ち返って,政策分析に利用可能なLeontief環境経済CGEモデルの開発を手がけたことである。そこではまず,環境と経済を統合し均衡論のフレームワークで考察したLeontiefの先駆的研究を展望したあと,Leontief環境経済モデルの構造の徹底的な解析を試みた。また,Leontiefモデルの拡張や一般化ならびに応用分析についても考察を行い,経済主体の最適化行動や政府による課税を組み込んだLeontief環境経済CGEモデルの開発を手掛けた。 本研究の第二の成果は,環境・経済統合勘定(SEEA)の拡張・改良版である環境SAMを構築することによって,環境SAMに基づくCGEモデルを構築し,これを用いて様々な政策分析を行ったことである。そこではまず,わが国のSEEAデータとSNAデータを用いて,詳細な「環境SAM」を構築し,その上で「帰属環境費用」に焦点をあてた簡易化された「環境SAM」のCGE分析を行なった。この環境SAMでは,労働,資本に加えて,「エコマージン」=帰属環境費用という生産要素の存在を仮説的に仮定し,実際には資本側の取り分として分配される所得の中に環境をいわば「搾取」して得た部分があり,維持費用概念に基づく帰属環境費用がその部分に該当すると考えた。この部分にコブダグラス型の関数形を当てはめて,いくつかの比較静学分析を実行した。主要な比較静学結果は3つある。(1)環境税,間接税の増税は,エコマージンを減少させる。(2)資本の外生的増加,労働の外生的増加に対するエコマージンの反応は逆になる。さらに(3)中間投入を帰属環境費用分だけ増加させた実験では,経済への影響は軽微なままエコマージンをゼロに出来る。 なお,SEEAやSAMを含むSNAのフレクシビリティに関する研究や,CGE分析に用いたソフトウエア(GAMS, HERCULES)に関する詳細な解説も行った。
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