研究課題/領域番号 |
11430007
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済政策(含経済事情)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曹 斗燮 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 助教授 (20262834)
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研究分担者 |
咸 恵善 中部大学, 経済情報学部, 助教授 (70218551)
黄 圭燦 名古屋商科大学, 総合経営学部, 講師 (70298503)
金 顕哲 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (90288449)
銭 佑錫 中京大学, 経営学部, 講師 (00329658)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | 開発主義 / 日本式の普遍性 / 技術学習 / 金融機関 / 年俸制 / CVS / 合弁事業 / コミットメント |
研究概要 |
本研究の課題は、近年の日韓の経済改革の動きを、比較制度分析の観点から捉えるところにある。日韓の経済改革の動向を具体的にみると、急速な高度成長を可能にしてきたイデオロギー(ここでは開発主義と呼ぶが、その仕掛けも含む)が機能不全を呈するなかで、それに取って代われる新しいイデオロギー(仕掛けを含む)がなかなか出てこないという点では類似しているが、アプローチの仕方は全く違う。日本では、嵐のようなグローバルスタンダード大合唱のなかでも、実際の制度改革は「日本式」を守ろうとする線で調整が行われているが、韓国では、制度・イデオロギーともに、「アメリカ方式」の積極的な受容という形のドラスティックな改革が進められている。変化の幅と深さともに韓国の方が大きい。自分の制度を持てない韓国は、外部の制度が入りやすい素地が大きいが、日本は違う。日本の変化は、ゆっくり進むというスピードの問題はあるが、多くの蓄積のうえの改革であるだけに、過去の遺産を活用できるメリットが大きいと思う。1年目は訪問調査を通じた実態調査に努めたが、2年目は第1回目の調査で明らかになった仮説に焦点を当てて、確認作業を行うとともに、論文の執筆を行った。以下では報告書の概要を簡単にまとめる。 曹の二つの報告書は、それぞれ日本的経営の普遍性と三星電子の技術学習に関するものである。第一の報告書においては、日本的経営を三つの構成要素に分けて、事業戦略や経営手法のところでは改善の余地もあるが、その基本前提に当るところは十分普遍性があり、海外への移植の必要性があると強調している。第二の三星電子の技術学習の論文は、成熟したものとして日本企業が半分諦めたカラーテレビ技術を三星が日本企業から導入して、それを育てて、日本企業と匹敵できる競争優位を作り上げるプロセスを細かく分析したものである。三星が採用した技術再活性化戦略は、日本企業の伝家の宝刀ともいうべき日本的組織化原理そのものだが、日本企業が忘れているうちに、三星が採用して見事に成功している。金の論文は、日韓のコンビニエンスストアの比較である。形態は驚くほど類似しているが、発展の道筋は大きく違う、なぜそうなのかという点が研究されている。黄の論文は、日韓の構造調整につき、政府、企業、金融機関の役割の異同を分析している。日韓の間に、政府、企業の役割はあまりにも異なっているので、その比較が難しいが、金融機関は比較的類似した役割を果たしてきたため、その比較の意味はあるという。日本は金融機関のモラルハザードの是正措置に焦点が置かれているのに対して、韓国では金融機関による企業へのモニタリングの強化に、構造調整の焦点を置いている。咸の論文は、人事管理の日韓比較である。日韓両国ともに、年功主義・温情主義から能力主義・年俸制・抜擢人事へと、人事システムの枠が大きく変化している。銭の論文は、日韓の合弁事業の継続性に関する研究である。実証研究によれば、合弁事業の寿命は単独出資よりも有意に短いという。継続性を確保するには、両者のコミットメントが欠かせないが、これは日韓の合弁事業だけに限った話ではないだろう。
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