本研究は最終年度にあたる平成13年度にインド及び中国の環境政策を特にODAという観点から調査した。特に中国における三峡ダムとインドのナルマダ・ダムのプロジェクトを比較して援助と環境の問題について考察を行った。インドにおいてはナルマダ・ダム建設にあたり、NGOやその他の国内外の団体の住民移住などの問題に対する反対からドナーが撤退し、その結果国際社会の目の見えない所でプロジェクトの環境に対する配慮がかえって減少してしまうという問題が生じた。一方で中国においては、三峡ダムの建設にあたって中国政府はインドの事例を教訓として、この一大プロジェクトの推行のためにODAを用いないことを決定した。中国政府のODAのファンジビリティの問題は近年よく指摘されているが、本研究はそれを実際に中国におけるフィールドスタディを行うことによって検証した。インドにおいても、研究者は詳細なフィールドサーベイを行い、実際に行われているプロジェクトの環境への配慮が不足したものとなっていることを指摘し、グローバリゼーションの進む中において開発と環境を両立させることの困難さと重要さを分析し、政策提言を行うことができた。本研究の成果を現在英訳中であり国際学術雑誌に投稿を準備中である。
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