研究概要 |
平成12年度研究実施計画の目標とその到達状況は以下の通りである。 1.Kingston University,Centre for Local History Studiesに作業を依頼していた1851-1861年センサス個票の連結分析法(longitudinal migration profile)の結果を平成12年8月に受け取り、対象都市であるミドルズブロウにおける人口移動諸指標の分析に入った。製鉄業が本格化する1851-1861年の間に、この都市には大量の人口(主として20-24歳および25-29歳の男子熟練工・未熟練工)が移入し、1861年の人口年齢構成・性比を特異なものにしたこと、二種類の労働市場(遠距離から流入する熟練工と近隣から調達される未熟練工およびアイルランド人未熟練労働者によって構成される)が存在していたこと等、19世紀後半の都市形成と人口移動に関して、幾つかの重要な事実発見をすることができた。こうした事実発見の一部は、平成13年に刊行予定の論文集、『地域工業化の比較史分析-ヨーロッパ・アジア・日本-』(北海道大学図書刊行会)の11章、「一九世紀後半イギリス製鉄工業地域における都市形成と労働市場」に発表した。 2.同じく当該都市の1871年センサス個票の入力をこの種作業に習熟したイギリ人研究補助者に依頼していたが、平成13年2月末に完了し、入力データを受け取った。 3.この都市の1841センサス個票のマイクロ・フィルム現像・焼き付け・製本を完了し、職業別・出身地域別人口諸指標を算出し、興味深い事実発見をした。結果の一部は、前掲論文集に発表した。 4.人口移動・近代都市史・地域史関連英文・邦文文献を収集し、対象都市に関する一次史料のマイクロ・フィルム複写をイギリスの文書館に依頼し、入手・製本し、分析した。
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