研究概要 |
本年度は年金基金の運用に関しての理論的な分析を行い、次のような研究成果が得られた。 現実の運用においては、市場における投資環境は一定ではなく、事後的な収益率はもちろんであるが、株式などの証券の期待収益率自体が変動していると考えられる。よって、投資環境が変動してゆく場合の最適なポートフォリオ戦略について分析い、特に株式などの証券の期待収益率が変動する場合について詳細な分析を行った。運用期間が長い場合には,短期的な視点からの運用を繰り返すような戦略をとることによって大きなロスが生じる可能性を指摘した。さらに、現実の資産運用においては、証券取引についての取引費用が無視できない場合が多い。そこで、取引費用が存在する場合について,連続時間モデルでの分析を行った。多期間モデルや連続時間モデルで取引費用を明示的に考慮すると,最適ポートフォリオを求めるのは非常に困難になるが,この論文では最適ポートフォリオを求めるためのひとつの手法を提示し,その分析を行った。さらに、現実の資産運用においては、債券のデフォルト・リスクの問題を無視することができない。それゆえ、デフォールト・リスクの問題を分析する第一歩として、デフォルト・リスクが存在する場合の利子率の期間構成の種々の既存のモデルを、デフォルト発生に対するアプローチの仕方から、オプション価格理論の応用として信用リスクを評価するコンティンジェントクレイムアプローチとデフォルト発生の確率課程を外生的に与えてしまうリデュースドフォームの二つに分類して整理した。
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