研究分担者 |
寺杣 友秀 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (50192654)
織田 孝幸 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (10109415)
桂 利行 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (40108444)
小木曽 啓示 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (40224133)
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研究概要 |
藤田の自由性予想を一般次元で解決することを目指して,藤田予想の相対版を考えた.藤田予想とは次のようなものである.「n次元の滑らかで射影的な代数多様体Xとその上の豊富な直線束Lを考える.このとき,付随した直線束K+mLは整数mがn+1以上ならば自由になる.」この予想は次元nが4以下ならば正しいことが知られているが一般次元では未解決である.藤田予想は対数的標準因子の存在に関する局所的な予想に還元できることが知られている.藤田予想の相対版は次のようになる.「滑らかで射影的な代数多様体Yからn次元の滑らかで射影的な代数多様体Xへの全射正則写像fでXの正規交差因子の外では滑らかになるものと,Xの上の豊富な直線束Lを考える.Yの標準因子の順像として得られるX上のベクトル束をFとする.このとき,F(mL)は整数mがn+1以上ならば自由になる.」藤田予想が次元に関する帰納法で証明できるならば,このような相対版を考えることは有効であろう.結果としては,相対化した藤田予想も絶対版の場合と同じ対数的標準因子の存在に関する局所的な予想から従うことがわかった.特に,次元nが4以下ならばこの予想も正しいことが証明された.この結果を証明するために,ベクトル束F上に放物構造というものを定義した.写像fに対応してX上にホッジ構造が定まり,Fはそのホッジ束として得られるが,ホッジ構造のモノドロミーに対応して定まるFのフィルター付けが放物構造である.これを使ってFに対する消滅定理の精密化を得た.この結果もそれ自体として意味のあるものと思われる.
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