研究概要 |
アレキサンドロフ空間Mの相対コンパクトな開部分集合Ωに対して,リーマン計量から定義されるエネルギー形式およびソボレフ空間W_0^<1,p>(Ω)(p【greater than or equal】1)を定義した.このときソボレフ空間W_0^<1,2>(Ω)がL^2(Ω)にコンパクトに埋め込めることを証明した.その系として,(関数解析的)ラプラシアンΔをエネルギー形式の生成作用素として定義すると,そのスペクトルが離散的であることが得られる.また,Mの特異点全体の集合から境界を除いたものの容量がゼロであることを証明した.これはポテンシャル論的には特異点集合は無視できることを意味する.この帰結としてエネルギー形成が強局所正則ディリクレ形式であることが従い,ディリクレ形式の理論が利用できることが判明した.アレキサンドロフ空間上のDC-関数に対してDC-座標近傍から定義されるラプラシアンΔ^<DC>の性質について調べ,関数解析的ラプラシアンΔをΔ^<DC>で近似できることを証明した.Δは一般に計算不可能であるがΔ^<DC>は原理的に計算可能であるので,先の結果はΔを計算するのに役立つ.さらにラプラシアンの固有関数や熱方程式の局所解の連続性の証明,熱核の存在性の証明を行った.以上によりアレキサンドロフ空間上の解析学の基本的な道具立てを確立した.これらの研究の応用としてn次元リーマン軌道体のリッチ曲率がnー1以上のとき,ラプラシアンのスペクトルと多様体の懸垂構造との関係について調べ成果を上げた.
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