研究概要 |
ランダム・ワイル・サンプリング法の開発 複雑な関数の数値積分のためのランダムサンプリング法は,一般に,精度を上げるために多くのサンプルが必要である.しかし一方,多くのサンプルを生成するためには大量の疑似乱数を用いることになるため,疑似乱数の統計的偏りが増幅されて思わぬ誤差を生じてしまう.このことを避けるため,通常の独立同分布確率変数列によるサンプリング(i.i.d.-サンプリング)の代わりに,ペアごとに独立な確率変数列を用いた新しいサンプリング法-ランダム・ワイル・サンブリング(RWS)-を開発した.RWSが使用する疑似乱数の数は非常に少ない.たとえば500回の硬貨投げによって決定される確率変数Xの平均をサンプルサイズ1千万で計算する場合,i.i.d.-サンプリングでは疑似乱数が500×1千万=50億ビット必要であるが,RWSを用いれば,わずか1048ビットで済む.しかも,両者の平均二乗誤差はまったく同一なのである. このように徹底したランダム性の削減は以下の二つの利点を生む: (1)RWSは疑似乱数の質に鈍感である.従って,多少,悪い疑似乱数を用いても数値積分の誤差は極めて少ない. (2)RWSによるサンプルの生成速度は疑似乱数生成法の速度にほとんど関係ない.従って精密だが生成速度の遅い疑似乱数生成法も用いることができる.その場合,きわめ信頼性の高い数値積分が実行できる. もちろん,利点(2)の方が著しい.さらに,RWSの変種として,一つのサンプルを生成するのに必要な疑似乱数のビット数が変化する場合にも適応できる動的ランダム・ワイル・サンプリング(DRWS)も開発した.
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