研究課題/領域番号 |
11440042
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河合 隆裕 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (20027379)
|
研究分担者 |
青木 貴史 近畿大学, 理工学部, 教授 (80159285)
竹井 義次 京都大学, 数理解析研究所, 助教授 (00212019)
|
キーワード | 完全WKB解析 / 超局所解析 / Borel変換 / 完全最急降下路 / 鞍点 / Landau-Zener / 断熱近似 / n-level |
研究概要 |
本年度の研究に於ては、次の3つの試みを同時進行させた: 1.どこ迄考察対象を拡げることが出来るかを理論的に絞り込む、 2.理論を深化させる為に必要な新しい手法(exact steepest descent method)の開発、 3.理論の具体的問題(断熱近似の下での遷移確率の計算)への応用。 一見無謀とも思われるこの多方面作戦は鮮かに成功した。その成功の因は、完全WKB解析と超局所解析の内在的かつ相補的関係の存在に対する我々の信念が表面的には異質な主題を有機的に結合してくれたことに在ると思われる。以下少しく具体的に内容を述べる。1の目標とした所は、そのWKB解に無限個のphaseが許されるような作用素の族の設定とその種の作用素の具体的解析、であった。我々は族の設定に、作用素のBorel変換の表象に対する超局所解析的条件を用いることに拠り、自然な形でその族に属する作用素の分解定理を得ることに成功した。尚、(論文は現在準備中。)2の目標とした所は、作用素Pに対するStokes曲線の決定に、Pのフーリエ変換PのWKB解に最急降下法を適用するとしたら、どのような形の理論を構築すべきか、と云う淡とした物であったが、計算機実験を交えた試行錯誤の後得られた結論は簡明である:通常の最急降下路を分岐させて作る"完全最急降下路"が鞍点を結ぶ時PのWKB解はStokes現象を呈する。この結果はJ.Math.Phys.に近刊予定である。3の目標は、古典的なLandau-Zenerの結果をn-level(n【greater than or equal】3)の時にどう捉えたら良いのかを考察することで、今迄と異なるfiltrationを用いることに拠り、極めて美しい理論的考察をこの種の断熱近似の問題に対して(実はそれは断熱近似と呼んで良いかどうか判らない微妙な状況である。)行うことが出来た。その理論の背景に"多重特性的作用素に対する得異性伝播定理"と云う超局所解析的定理が在ることも興味深い。
|