無限次元空間上の確率解析の多角的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11440045
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 重川 一郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00127234)
• 研究分担者: 上木 直昌 京都大学, 大学院・人間環境学研究科, 助教授 (80211069) ; 日野 正訓 京都大学, 大学院・情報学研究科, 助教授 (40303888) ; 吉田 伸生 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (40240303) ; 高信 敏 金沢大学, 理学部, 助教授 (40197124) ; 会田 茂樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (90222455)
• キーワード: Brown運動 / Dirichlet形式 / 半群の比較 / 半群の交換関係 / 対数Sobolev不等式 / 反射壁Brown運動 / 基本解 / 準楕円性

研究概要

無限次元の空間における確立解析はDirichlet形式や、対応する半群による解析が有効である.そのために,半群の抽象的な枠組について交換定理や,比較定理について研究を進めた.交換定理については半群と勾配作用素との交換性が重要である.ここでは交換関係を利用して生成作用素の定義域をDirichlet形式(但し作用する空間は一般にベクトル値の関数からなる)の定義域に帰着されることが得られた.このことから,交換関係が全体で成り立つには,生成作用素が本質的自己共役となる領域で確かめればよいことが従う.
これら半群の理論は応用上も重要で,勾配作用素と生成作用素の平方根の定義域がL^P空間の枠組で同値になることを示すときに有効である.実際に対数Sobolev不等式と,ポテンシャルの指数可積分性の下でこれらの同値性を得た.この手法は無限次元で有効であるが,有限次元の場合には境界のあるRiemann多様体の反射壁Brown運動に対しても応用できる.
これらに関連して,日野氏は半群の解析を利用し,一般的な枠組で推移確率の短時間漸近挙動についての新しい評価式を得た.また会田氏は双曲型空間上のループ空間で対数ソボレフ不等式を証明したまた上木,松本,高信氏らにより,Schrodinger作用素を中心に,Brown運動の汎関数による表示を用いて,熱核の評価や準楕円性,Trotterの積公式の精密化などの結果が得られている.

研究成果

• [文献書誌] Ichiro Shigekawa: "Semigroup domination on a Riemannian manifold boundary"To appear in the special volume of Takeyuki Hida.
• [文献書誌] Masanori Hino: "Eeponential decay of positivity preserving semigrops on L^p"To appear in Osaka Journal of Mathematics.
• [文献書誌] Hiroshi Sugita,Satoshi Takanobu: "A limit theorem for Weyl transformation in infinite dimensional torus and central limit theorem for correlated multiple Wiener integrals"To appear in Journal of Math. Sci. Univ. Tokyo.
• [文献書誌] Shigeki Aida: "On the irreducibility of Dirichlet forms on domains in infinite dimensional spaces"To appear in Osaka Journal of Mathematics.
• [文献書誌] Naomasa Ueki: "Asymototic expansion of stochastic osoillatory integrals with rotation in varianc"Ann. Inst. H. Poincare Probab. Statist.. 35. 417-457 (1999)
• [文献書誌] Nobuyuki Ikeda,Hiroyuki Matsumoto: "Brownian motion on the Hyperbolic plane and Selberg trace formula"Journal of Funct. Anal. 163. 63-110 (1999)