研究課題/領域番号 |
11440053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宍倉 光広 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192606)
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研究分担者 |
谷口 雅彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50108974)
上田 哲生 京都大学, 総合人間学部, 教授 (10127053)
宇敷 重広 京都大学, 大学院・人間環境学研究科, 教授 (10093197)
辻井 正人 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20251598)
志賀 啓成 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10154189)
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キーワード | 複素力学系 / フラクタル / カオス / マンデルブロート集合 / ジュリア集合 / くりこみ / 剛性 / 分岐 |
研究概要 |
本研究では、複素力学系に関する様々な問題、またそれと密接に関連している実力学系、関数論、クライン群論、タイヒミュラー空間論などに関連する問題の研究を行った。以前の研究では、複素力学系に現れるフラクタル(ジュリア集合、マンデルブロート集合)の幾何学的性質を調べ、2次多項式のパラメータ空間に分岐集合として現れるマンデルブロート集合の境界のハウスドルフ次元が2であること、そして、この境界のgenericなパラメータについてはジュリア集合の次元も2であることなどを示した。次に問題になっていたのは2次元ルベーグ測度が0かどうかであるが、これについて、ジュリア集合が連結で、無限回くりこみ不可能かつすべての周期点が反発的という条件の下で、ジュリア集合の測度が0であり、対応するパラメータ集合の測度も0であることを証明した。これに関する論文は現在準備中である。この研究の過程で、これらの現象の背後にあるさまざまな事実が明らかになってきた。まず、放物型不動点の分岐がジュリア集合を不連続に変化させ、ハウスドルフ次元も大きく変えること。また、放物型不動点の分岐に付随して新しい種類のくりこみが定義され、適当に設定された関数空間でのアプリオリ評価も得られること。(これは、MLC予想での残された場合(放物型分岐に対応するくりこみを含むもの)について、新しい方向性を示唆するものでもある。)そして、Yoccoz puzzleの方法が不変集合の適切な分割により、ルベーグ測度の問題にも応用できることがわかった。さらにこの方法を用いて、Yoccoz puzzleでの等角構造の引き戻しにより、ある種のタイヒミュラー空間の自己写像が得られ、その不動点の問題がが、2次多項式の剛性問題、ひいては実2次多項式での双曲性の稠密さの証明にも応用できることもわかった。これに関する論文も現在準備中である。 また、実力学系と複素力学系とは接点も多いが、実単峰写像族の単調性の問題などについては、これまでの辻井正人氏(北海道大)との研究で、放物型不動点をもつ場合の無限の振動の問題について、正則2次微分へのRuelle作用素やFatou座標への誘導写像について調べられ、その困難がより明らかになってきた。また、高次元力学系についても研究を始め、射影空間の正則写像の完全不変多様体の決定や、楕円関数から定義されるLattesの写像の高次元への拡張についても構成した。日本大学の松本重則氏との共同研究では、円周上の無理数回転をベースとする円環上のskew productについて、有界変動の条件の下で、写像が極小不変集合をもつことと、完全可積分型であることの同値性を示した。またいくつかの条件の下で、非可積分で極小不変集合をもたないような写像はgenericであることも示した。高次元複素力学系の研究の方向性について調べるために、Universite de RennesのSerge Cantat氏を招待し、連続講演をしてもらい、K3曲面上の力学系の不変カレント等についての共同研究も行った。理論的研究を補助し、新しい現象の発見・検証をするためにコンピュータによる数値実験も行った。
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