研究分担者 |
廣川 真男 岡山大学, 理学部, 助教授 (70282788)
勝田 篤 岡山大学, 理学部, 助教授 (60183779)
酒井 隆 岡山大学, 理学部, 教授 (70005809)
伊藤 宏 愛媛大学, 工学部, 助教授 (90243005)
岩塚 明 京都工繊大学, 繊維学部, 教授 (40184890)
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研究概要 |
本研究の課題は,シュレーディガー作用素のスペクトル構造に及ぼす磁場の影響である.とくに,デルタ型磁場による散乱問題を通してアハロノフ・ボウム(Aharonov-Bohm)効果と呼ばれる量子効果の数学的究明に力点を置いた.以下の3課題について研究成果をあげた. 1.2次元磁場散乱における低エネルギー領域での散乱振幅の漸近挙動 2.デルタ型磁場をもつシュレディンガー作用素へのノルムレゾルベント収束 3.2つの互いに離れたデルタ型磁場における散乱振幅の漸近解析 課題3についてのみ実績概要の説明する.1つの点に台をもつ磁場に対しては,その散乱振幅はすでに計算されている.2次元磁場散乱においては,例え磁場が1点に局在しても,対応するベクトルポテンシャルはその台を全平面にもち,無限遠でも長距離型の緩やかな減衰になるのが著しい特徴である.本研究の最大の研究成果は,2点を中心とするデルタ型磁場による散乱において,中心間の距離を大きくした(磁場の相互作用を弱めた)ときの散乱振幅の漸近挙動を解析し,ポテンシャルを通して及ぼし合う相互関係を明らかにしたことである.さらに,現在,複数個のデルタ型磁場による散乱への一般化を継続課題として試みている.その解析は,磁場の位置関係,入射方向,散乱方向に深く関係し,興味深いものである.ベクトルポテンシャルを流れの速度場,磁場を渦度に読み替えると,磁場散乱は渦による音波の散乱現象にも当てはまる.例えば,カルマン渦列による音波の散乱はその一例である.基礎方程式はオイラー方程式を線形化して得られる双曲型方程式となり,シュレディンガー方程式とは異なる.渦による散乱問題に対する散乱振幅の計算は,工学,物理学の雑誌とくに流体力学分野の専門誌でしばしば取り扱われてはいるが,数学的な厳密さを欠くものである.数学的基礎付けも継続研究課題である.
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