研究概要 |
平成11〜13年度の3年間、すばる望遠鏡の第一期観測装置であるOH夜光除去分光器の開発と同装置を用いた試験観測、及び、ファイバーを用いた同装置の多天体分光用システムの開発を行った。本研究の概要は以下の通りである。 ●OH夜光除去分光器は透過率40%,夜光除去率1/25で、通常の分光観測手法よりも約1.2等暗い天体の分光観測が可能であることが実証された。同装置は、平成13年度よりすばる望遠鏡共同利用装置として運用を始めており、観測や解析のための各種スクリプトを開発した。 ●試験観測期間中に得られた赤方偏移5前後のクェーサーの分光観測結果と、スローンデジタルスカイサーベイの公開データ等各種アーカイブデータを合わせて、近傍から宇宙初期までのクェーサーの鉄輝線の進化をまとめ、論文化した。 ●試験観測期間中には、赤方偏移2.3付近の電波銀河16天体の分光観測にも成功し、現在、これらの天体の総合的な性質をまとめて論文化の準備を進めている。 ●多天体分光システム用の16本のXYプローブステージを製作し、その制御ソフトとカタログからの最適配置選択ソフトウェアを開発した。 ●多天体分光システム用ファイバーバンドルは、当初、テーパードファイバーを用いて開発を進めてきたが、試作したバンドルに問題があることが判明し、平成13年度にセルフォックレンズを用いてファイバーバンドルを製作し直した。国内での特性試験の後、3月にはOH夜光除去分光器との結合試験を行った。 今後、すばる望遠鏡赤外ナスミス台上で、OH夜光除去分光器多天体分光モードの試験を数度行なった後、試験観測へと移行する予定である。本研究により、多天体分光システムの基本となる技術的な課題はほぼ解決され、今後は完成度を高める段階へと移行する。
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