本研究では、ΔE=1keV(FWHM)以下という高いエネルギー分解能と100ミクロンの位置分解能とを合わせもつ硬X線・ガンマ線素子を、世界で初めて実現することをめざす。われわれは最近、電極と半導体の界面の物理を詳しく考察することにより、きわめて優れたエネルギー分解能をもつCdTeダイオードの実用化に成功した。われわれは、本研究費を用いて、基礎的な研究を行ない、安定性などに対する知見を得るとともに、CdTeのウェハーを多層にした検出器、さらに、ピクセル検出器とストリップ検出器の試作を行った。最近のわれわれの結果は2mm角で0.5mmの単素子に関して、60keVでのエネルギー分解能が850eV(FWHM)と世界最高のレベルに達している。CdTe半導体は熱や圧力を加えると、性能が著しく劣化するなど、プロセス状困難な個所があり、ピクセル電極の形成や、回路のバンプ接合などの技術が確立しておらず、特にピクセル検出器のような2次元検出器は、まだ実用化されていない。われわれは、バンプに用いる金属の研究や、バンプの形状、または接合時の温度条件などの研究を行ない、ピクセルサイズ600ミクロン角、素子の大きさ15mm角のCdTeピクセル素子を読み出し用のファンアウトボードにバンプ接合する事に成功した。各ピクセルから信号を独立に読み出すためには、400チャンネルものアンプを持つ2次元LSIが必要である。現状ではこのような読み出しが可能なアナログLSIは存在しない。そのために、シリコンストリップ用の1次元LSI(1チップに128チャンネルの前置増幅器や、コンパレータ、整形アンプがはいったもの)を応用した読み出し回路システムを製作した。またストリップ検出器に関しても同様な技術を用いて製作した。
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