研究概要 |
我々は、「超新星残骸と分子雲の相互作用」のサーベイをサブミリ波観測の特長(衝撃波を受けた分子ガスに対して特に高感度)を活かして行おうとしている。そのために、本年度はサブミリ波望遠鏡(富士山頂サブミリ波望遠鏡、移動型18cm電波望遠鏡に搭載できるように設計した、新しい高性能サブミリ波受信機を製作した。主要部分の製作は完了しており、2000年4月に総合調整を行い、その後サーベイ観測に使用する予定である。 この新たに開発した受信機以前に製作された旧受信機を富士山頂サブミリ波望遠鏡に搭載して、さまざまなサブミリ波観測を行い、これまで全く調べられてこなかった分子雲の形成、化学的進化に関する直接的観測証拠を得た(Maezawa et al. 1999)。また、巨大分子雲におけるCO分子・炭素(C)原子の混在の様子を世界で初めて明らかにした(Ikeda et al. 1999)。 また、海外のサブミリ波望遠鏡を利用して、観測的研究を行った。超新星残骸W28方向を観測し、分子雲との相互作用の確固たる証拠を得、衝撃波で加速された分子ガスとされる前の分子ガスを世界で初めて空間的に分離し、その位置関係・ガスの物理状態を明らかにした(Arikawa, Tatematsu, Sekimoto, Takahashi 1999)。暗黒星雲の観測をおこない、中性炭素原子ガスの物理温度が、加熱プロセスと冷却プロセス(中性炭素原子の微細構造遷移を含む)の平衡によって、ほぼ一定値になっているらしいことを明らかにした(Tatematsu et al. 1999)。
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