研究概要 |
KN相互作用は、互いに矛盾する実験データにより、その性質が理解されていなかった。我々は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)でのK中間子水素原子の精密分光によって、この相互作用を不定性無く決定した。 表記の研究は、この研究をさらに押し進めようとする物である。 この研究のために、 1)新たなデータに基づいた、新しい物理学領域の探査 2)アイソスピン依存性決定のための高精度化を同時に研究した。 2)の為には、非常に多量のK中間子を、極めて密度の低い水素・重水素標的に効率よく静止して実験を行う必要がある。この為、φ-factoryから得られる、単色・低運動量のKを用いたCCDによるX線分光のための実験をINFN研究所(DAΦNE)に申請し、DEAR実験として認められた。本研究によりすでに、実験準備は完了した。しかし、残念ながら加速器のルミノシティが上がらず、実効的な実験に至っていない。 一方、2)の理論との共同研究によって、Kが原子核中で安定な状態を形成し、^4Heを静止標的とした、(stopped K^-,n)反応で極めて効率的にこの状態を生成可能であることを示すことが出来た。 これは、KN相互作用が極めて強い引力であるせいで、核密度を異常に高め同時に核半径を収縮するので、Kの質量以上に深い(500MeV)ポテンシャルを形成する。このため、主崩壊チャンネルであるΣπより深い(108MeV)アイソスピン0の束縛状態を形成する。この為、1核子反応では崩壊することが出来ず、原子核の基底状態から見ると400MeV近い励起状態であるにも関わらず、幅が20MeVと異常に狭いことが予想された。
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