研究概要 |
本研究の目的は,π^+π^-原子の寿命を直接測定することによってパイ中間子の散乱長を求める実験を行い,これをカイラル摂動理論で求められているものと比較することにより非摂動領域でのQCD(量子色力学)の検証を行うことにある. 1996年にこの実験の計画が採択されて以来3年間にわたって検出器類の設計,製作,ビームによるテスト行ってきた.1998年にビームラインが完成し,6週間与えられたのテストビームによって得られた検出器,データアキジションシステムのテストを行ったデータの解析を本年度初頭に行った.その結果を踏まえて検出器系に改良を加え,6月から本データの取得を開始した.夏の休止を挟んで本データの取得を11月まで続け,現在は得られたデータの解析が進行中である. データは予定の4ターゲット中から集中的にNiとPtについて取得した.統計はかなり良く,解析の途中経過については1999年12月INSシンポジウムにおいて発表した(論文3,4参照). それと平行して今後の検出器系の改良のためのR&Dやテストも行ってきた.一つはdE/dxカウンタ信号の新しいインテグレータの試作であり,この導入によりより早くレベル2トリガー信号が得られるだけでなく,許容イベント数も増加し,また回路の不安定生も取除くことができる.また,現在のdE/dxカウンタのデザインにはプラスティックシンチレータを用いている事から来るデッドスペースの問題があり,これをのぞくために半導体検出器を用いた新しいdE/dxカウンタの試作を行っている.更にレベル2トリガーの選択率をあげるためにスペクトロメータマグネット中に新しいシンチレーティングファイバーホドスコープ面を増やす準備も行っている.
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