研究概要 |
本研究の目的はCERNにおけるDIRAC実験を拳行する事によって,π^-とπ^+がクーロン力で束縛されたπ^-π^+原子の崩壊寿命を直接測定し,π中間子のs波散乱長を求め,これをカイラル摂動理論で計算した散乱長と5%以内の精度で比較することにより非摂動領域でのQCDの検証を行うことである. 1998に新しいこの実験のためのビームラインが完成後徐々に装置を改良し,又プライマリビーム強度を上げながらデータの取得を行ってきた.本年度は6ヵ月間ビームを貰い,順調にデータ取得を行った.実にCERNPSのビームの半分をこの実験のために使用することができた. 現状で,得られたデータの質は良く,1999年中に得られたデータの予備解析は終り,2000-2001年に取得したデータについて今解析を進めている所である.標的はPt, Ni, Tiについてデータを取得している.これまでの解析で得られた原子対は,Niについて4920±270,Tiについて1830±160,Ptについて150±35である.これから得られたπ^-π^+原子のpreliminaryな寿命は(3.6+0.9-0.7)×10^<-15>秒で,±22%の誤差を含むが,2001年のデータのすべての解析が終れば±14%の精度で寿命が決定でき,2002年のデータ取得後には所期の5%の精度で10%の精度で散乱長を決定できるものを思われる.実験結果並びに実験装置については国際学会等で報告しているが,現在2つの諭文を準備中である. 本年度も亦上記に平行して種々の技術的な改良を行ってきた.現存のdE/dxカウンタが飽和する現象を改善するため1stripの計測率が少く,かつトリガーにも使えるほど高速な(50ns)読出しのできるシリコンマイクロストリップ検出器の開発研究を行い,実用できる状態になった.又更にトリガー,トラッキング両方の役割を負っているシンチレーティングファイバーホドスコープを既存の2面に斜めの座標を読むための1面を加え,効率,棄却率ともに改良できるようにした.更に今後より優れたトリガーを作るための新しい0.25mmファイバーを用いたホドスコープの開発研究を開始した.
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