研究概要 |
CERN(欧州共同原子核研究機構)におけるPS212実験(通称DIRAC)を遂行することにより,低エネルギー領域でのQCD(量子色力学)の検証を行うことが本研究の目的である.私どもはπ^+π^-の束縛状態であるハドロニック原子(A_<2π>)の正確な寿命の測定がπ散乱の散乱長をモデルに依存しない形で与える事を用いてπ散乱の散乱長の測定を行う実験プロポーザルを提出し1996年に実験は採択された. 以後日本グループは,検出器系としては,その実験成功の鍵ともなる大強度フラックス中でのパイ中間子対を検出するためのトポロジカルトリガーデバイス及びトリガー系の開発と作製および保守を担当してきた.1999年に本格的にデータ取得を開始し,データのバックグラウンドを減らすための色々な対策をとりながら,PSからの引き出しビーム強度を徐々にあげて実験を続けてきた.日本グループの担当するトリガーについていえば,ScifiホドスコープやdE/dxカウンターのチューニング,読み出し回路や積分回路の改良,トリガーロジック回路の改良等によって実験条件の改良に大きく寄与してきた. DIRAC実験は現在データ取得が進行している段階にある.2003年秋までには当初予定の統計の近くまでのデータが取得できる予定である.データの解析も進んでおり,近い将来結果を公表すべく努力している. 加えて現在DIRAC実験に用いられている検出器を改良し,更に大強度のビームに耐えられるようにし,本計画からの発展としてKπ原子の寿命測定も行えるようにするための開発研究を実験実施と平行して行った.
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